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会社が破綻しかけた際、事業再生を検討することがありますが、そのための具体的な再生法として「私的再生」と「法的再生」という2種類の手段を考えることが可能です。このページでは、私的再生と法的再生の違いや特徴をまとめて解説しています。
私的再生とは、裁判所のような司法機関を介在することなく、債務者や債権者といった私人が互いに交渉して返済方法や返済条件といった内容を見直し、事業再生を目指す方法です。債務者と債権者の全員で合意が得られれば司法の介入を必要とせず借金の返済計画の見直しやリスケジューリングなどを行える点が特徴です。
合意までの手順について法的な定めはなく、話し合いが適正に行われて合意を得ることが重要となります。
私的再生のメリットは、司法が介入しないために手続きなど法的な手順や仕様が定められておらず、交渉が順調に進めばスムーズに事業再生を目指せる点が挙げられるでしょう。また債権者からの合意さえ得られれば債務者にとって有利と思われる条件で交渉がまとまる可能性もあり、互いの信頼関係や交渉の進め方次第では事業再生のハードルを下げられることもメリットです。
ただし、債権者全員から債務者が合意を得なければならない点には注意してください。また法的拘束力がないからこそ、誠実に話し合いの場を設けて接するといったことも大切になります。
私的再生のデメリットは、司法機関の介入がなく、法的拘束力を得られないことにあります。また、債権者全員と交渉した上で全員から合意を得なければならず、交渉の進め方や条件・内容によってはそもそも債権者から即時に拒否されるといった恐れもあるでしょう。
私的再生はあくまでも私人間で行われる交渉や話し合いがベースとなっており、返済計画の見直しやリスケについても債務者から債権者へ提示することがスタートとなります。そのため、交渉条件や状況によっては非常に厳しい変更やリスケしか認められず、事業再生が正常に進められない可能性も考慮しなければなりません。
私的再生の中にも複数の種類があり、どのようなパターンを選択するかで詳細も異なってきます。ここでは私的再生の方法に関して3つの種類を紹介していますので参考にしてください。
私的整理ガイドラインとは、経済団体連合会や全国銀行協会を土台とする研究会によって策定されたガイドラインであり、このガイドラインの内容に従って私的再生の条件や内容を検討することが可能です。
ガイドラインを利用するには過剰債務による自力再建が困難であり、債権者の支援によっては再建が期待できるといった複数の要件を満たしている必要がありますが、手続きが認められれば債務免除や資本増強措置を受けられる点が特徴です。
地域の商工会議所や産業支援センターなど、経済産業省から産業活力再生特別措置法にもとづいて委託を受けている事業者が支援機関となり、その機関のサポートを受けながら事業再生を目指していく方法となります。
私的再生や事業再生について各機関に常駐している専門家へ相談することが可能となっており、再生計画のリプランニングや金融機関への支援要請・債務調整といった交渉面でもフォローを受けられることが重要です。
裁判所の介入を必要とせず、民間の話し合いを基本として物事の解決を目指す「ADR」による私的再生です。なお、交渉には法務大臣の認可を受けている事業再生ADR事業者の介入が必要となっており、司法機関は介入しないものの事業再生ADR事業者が介入して対応してくれることに注意してください。
事業再生ADR事業者が介入して手続きが始まった時点で債務は一時的に停止され、その上で債権者会議といった交渉の場を設けます。
法的再生とは文字通り、法律にもとづいて実施される事業再生です。具体的には民事再生法などの法律が基礎となり、司法機関である裁判所が介入して事業再生計画を管理・主導します。法的再生は裁判所の介入によって法的拘束力が発生するため、債務者も債権者も法律によって定められているルールにしたがって対応しなければなりません。
法的再生のメリットは、司法機関である裁判所が介入して、交渉内容に法的拘束力が発生することです。これによって債務者も債権者も法的な定めの下で行動することが必要となり、手続き中に債務が免除されている間は債権者からのプレッシャーを気にせずに落ち着いて対処することができます。
事業再生の具体的な内容についても、民事再生法などの法律が根拠となるため、それぞれの事業者の状況と法律を照らし合わせて再生計画をプランニングすることが可能です。また返済条件の変更や猶予期間の設定といった交渉についても、私的再生と比較してより確実性が高くなると期待されています。
当然ながら、法的再生では債務者と債権者という当事者間の話し合いだけでルールを考えることができず、裁判所の管理・指導によって手続きや交渉が進められます。そのため債権者からの信用を失うリスクが大きくなり、事業再生を叶えた後で改めて資金援助や融資を受けようとした場合に、取引先として認められない恐れがある点に注視しなければなりません。
また、手続きの手順や交渉の進め方についても法的に定められた仕様や手順、書式に従わなければならず、必要な書類を作成して提出するだけでも相応のコストや労力が発生する点は重要です。その他、再生歴が公に残ります。
法的再生による事業再生を考える場合、より細かな分類として3つのパターンが挙げられます。ここでは法的再生にもとづく3つの種類についてご紹介しますのでチェックしておいてください。
民事再生は裁判所が監督委員を選出し、その監督に従って債務者が自ら事業再生を目指していく法的再生です。民事再生を受けられるかどうか、まず債務者が裁判所へ申立を行い、その上で審査が行われて認められれば手続きが始められます。
その後、債権者集会が開かれ、議決権行使者の過半数の同意を得て、かつ議決権総額の2分の1以上の承認が多数決で認められれば再生を進められます。
企業更生もまた債務者である事業者の申立により、裁判所が再生管財人を選出し、その再生管財人が債権者などステークホルダーの権利調整を考えながら事業の抜本的再生を目指していく法的再生です。民事再生と似ている方法ですが、民事再生と異なり経営者や株主といった面々が退任することが再生条件となります。
そのため、企業更生を選択した場合、現時点の経営層は刷新されることになります。
裁判官と調停委員が仲介役となって、債務者や債権者、その他のステークホルダーとの間で権利調整などを行っていく法的再生です。裁判官や調停委員は調停委員会を発足し、債務者らは調停委員会の主導の下で交渉や再生計画の策定を進めて行かなければなりません。
返済計画の見直しや事業再生の具体的な流れについては、申立人である債務者と債権者、そして調停委員会の合議によって決定されます。
企業が破綻を回避するために事業再生を考える場合、債務者と債権者といった民間で交渉の機会を設けて内容をすり合わせる私的再生と、裁判所への申立をきっかけとして司法の介入により事業再生計画を考えていく法的再生の、大きく2パターンが考えられます。
私的再生と法的再生ではそれぞれにメリット・デメリットがあり、選択した解決法や内容によっては、事業再生を行った後の会社の在り方や取引先との関係性にも大きく影響してくるため、専門家へ相談して、冷静に自社の現状や将来的なリスクなどを考慮しながら選択肢を検討することが大切です。
自らも経営の経験を持ち、阪神・淡路大震災によって140億の負債を負うが、自力で立ち直った経験を持つ。悩める経営者の方へのアドバイスを行い、これまでに1,500社以上の事業立て直しに関わってきた実績あり。(2024年5月時点)